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銀のペーパーナイフあるときなにげなく、銀のペーパーナイフを作ろうと思いました。でも、ペーパーナイフって、何? 私は、ペーパーナイフのある風景を思い描きました。それは、庭に面した静かな書斎。大きく重厚な木のデスク。鈍い光沢の革のライティグマット。忙しい社会とのつきあいを逃れ、ひとときの安らぎと、深い思索のための場所。届けられる、自ら開封しなければならない、ひそやかな知らせ。ペーパーナイフを手に取り、封を切って取り出す、喜びや悲しみ、時には感動や苦痛も。 ペーパーナイフのルーツをたどると、ヨーロッパで印刷技術が発展した頃にたどり着くようです。その頃はまだ断裁技術が発達せず、本は袋とじのまま売られていました。ペーパーナイフは本のページを切り開きながら読むため必需品でした。 ナイフは何故か、気を落ち着かせる。そう思われる方も多いことでしょう。それは大昔から、人がそれを身を守る最後の武器としてきたからかも知れません。 ここまで来て、私は自分が作るペーパーナイフのイメージが沸いてきました。とっさの時に身を守れる鋭さ。それを手にとって眺めたとき、心が澄むような落ち着きを覚える穏やかで優美な形、手触り。そこに、静かに「存在する」、ということが、「紙を切る」という機能以上に重要な、何か。 このペーパーナイフは幅30mm、厚さ6mmの銀の板を素材に、ヤスリで削り出します。 取引のあった銀座の文房具店の中二階の特選品売り場に置いてもらったことがあります。置くとすぐ、フロアマネジャーから、「あんな高いもの、売れないよ・・・」と電話がかかってきました。私は、半年、置いておいてください、きっと出会いがありますから、と答えました。そして、買われる方はきっと何もおっしゃらず、黙ってお買い上げになりますよ、とも。
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